女性ドライバーはトラック業界を変えられるか

豊富な雇用市場と言えば、皆にとって素晴らしいニュースのように聞こえるかもしれません。しかしながら、低失業率が求職者にとって利益をもたらす一方、トラック輸送などの労働者不足の直面している産業にとっては深刻な問題となりかねません。このような企業は現在、欠員を埋められず、将来の成長に備えることに苦労しています。

トラック輸送の課題には、雇用に対する新しいアプローチが必要です。従来の人材プールの外にも目を向けて、冒険してみるのです。例えば、ドライバーの大半は男性ですが、女性はこれらの仕事を優秀にこなせるにも関わらず候補者として見過ごされがちです。トラック輸送における女性の雇用機会について学ぶために、非営利団体「女性トラック輸送協会(WIT)」の創設者兼CEOである、Ellen Voie氏にお話を伺いました。

 

なぜ女性とトラック輸送は相性がいいのか

トラック輸送は大きな産業です。Indeedのデータによると、2018年には100万件を超えるトラックドライバーの求人が投稿されました。しかしなら、業界の誰もが知るようにその雇用状況は厳しいです。求職者の関心は需要に届かず、ドライバー不足は2018年までに16万人に達すると予測されています

企業はトラックドライバーのポジションを埋めるのに長年苦労してきていますが、高い離職率や高齢者の退職、ドライバーを要する製品需要の増加により、状況は悪化しています。しかしながら、業界の求人活動で未だに見落とされている重要な層があります。それは女性です。

女性は一般労働力のほぼ半数を占めていますが、トラックドライバーでは8%に満たない状況です(この数字はやや増加傾向にあります)。女性はこの業界に貢献できることがたくさんあります。Voie氏によると、女性の方が男性に比べて交通事故に巻き込まれる率が20%低いだけでなく、各種機器の整備を丁寧に行い、トレーニングもしやすく、顧客サービスや書類処理においても優れているとのことです。

Voie氏は、トラック輸送業界において、性別の多様性を促進し、女性の業績を讃え、課題を最小限に抑えることを目的として、2007年にWITを創設しました。小規模から始まりましたが、今では会員数4000人を超えるグローバル事業に発展し、大きなソーシャルメディアもフォローしています。

トラックドライバーや運送業のキャリアには女性が気づいていないかもしれない多くの利点があるとVoie氏は言います。大型トレーラーのドライバーの平均年収は43,000ドル強ですが、これは連邦の定める最低賃金を上回っています。また、労働者の関心を高めるために賃金を引き上げる企業もあります。さらに、性別によるドライバー間の賃金格差はありません。

「給与は走行距離、積載量あるいは歩合で支払われます。」とVoie氏は言います。

大学を卒業していない女性にとって、トラックドライバーは他の一般的な職種、例えば外食サービスや在宅医療などに比べて福利厚生が優れており、安定性もあります。さらに、ドライバーには管理職や内勤の職種に昇進する機会も明確にあると、Voie氏は指摘します。

 

トラック運送会社はより多くの女性を雇いたい

さまざまなメリットがあるにも関わらず、女性にとってこの業界のイメージというのはまだまだ問題があります。ドライバーの90%以上が男性であるため、トラック輸送は長い間男性的な職業としてみなされてきました。この無意識の偏見のせいで企業は採用活動において主に男性を対象としていることに気づかないかもしれません。同様に女性の求職者の多くについても、トラック輸送というキャリアが彼女たちの視野に入っていないのです。

「人というのは自分に似た人を雇うのです。」とVoie氏は述べています。「それが理由で、輸送業界では女性が高い役職につくのが難しくなっています。」問題は企業が女性を雇いたくないというのではなく、ただ、『雇い方を知らない』のです。 

Voie氏によると、簡単な解決策としては、トラック輸送会社が意図的に女性をターゲットにした求人広告を打ち出すという手があります。WITでは採用企業のこのような努力を支援するための採用ガイドを開発し、Voie氏は業界イベントで戦略とベストプラクティスを定期的に紹介しています。

「『年齢も性別も人種も気にしていません。ただ、いいドライバーが欲しいだけです。』とトラック輸送会社の人たちは私にこう言うんです。」とVoie氏は振り返ります。「そういうとき、私はこう言います。『いいえ、あなたは気にするべきなんです。もし採用担当者がみんな男性だとしたら・・・女性に関心を持ってもらえるはずがありません。」彼女はさらにこう付け加えました。「仕事のリスクを強調したり、あるいは露出度の高い女性の写真など性差別的な広告コンテンツを使用することで女性労働者を遠ざけてしまっている企業も中にはあります。」

ソーシャルメディアはトラックドライバーの仕事を検討しそうな女性コミュニティについてユニークな洞察を提供していると、Voie氏は言います。例えば、WITのFacebookページには11,000人の女性フォローワーがいますが、そのうちの80%はオートバイに乗る人達です。Voie氏はトラック輸送会社にオートバイイベントで宣伝を行うことを奨励しています。

採用企業はWIT専用の求人サイトメンターシップ制度を通じて女性求職者とつながることもできます。そのメンターシップ制度のメンバーおよびパートナーにはFedEx Freight(フェデクスフレイト)やMIchelin(ミシュラン)などの大企業も含まれています。

これらすべての取り組みにおいて、「私たちはロールモデルであり先駆者である女性にスポットライトを当てるよう心がけています。」とVoie氏は言います。

 

トラックドライバーを検討する際、女性が優先するのは安全性

女性トラックドライバーにとって、偏見よりも深い課題がいくつかあります。安全性に関する懸念は一般的で、車両のメンテナンスが行き届いていないとか、荷台が危険もしくは十分な照明設備がついてないというようなことから、悪天候の中でも無理やり運転させられるのではないかというようなことまで、あらゆることを網羅しています。

このような企業文化を持つトラック輸送会社は「女性から敬遠される」とVoie氏は言います。なぜなら、「安全でないと思ったとき、女性は仕事から去る」からです。

WITは安全性向上のために、トラックステーションと連携して照明の改善やセキュリティガードの追加装備などの変更を推奨しています。その他にもWITは自己防衛ワークショップを主催し、トラック製造メーカーと協力して、女性ドライバー向けに安全アラームをタクシーに装着したり、人間工学に基づいた追加機能を装備したりしています。

パートナーと交代で働くことも安全性向上のひとつの手段です。実際、多くの女性にとってトラックドライバーは人生の後半でのキャリアチェンジであるとVoie氏は指摘します。「プロのドライバーである夫やボーイフレンドが、『子どもたちも独立したし、僕と一緒に運転してみないか。』と声をかけるのです。」WITの内部データによると、女性ドライバーの83%がこのようにしてビジネスに参入しており、女性ドライバーの平均年齢は50歳です。

選択肢は長距離トラック輸送以外にもあります。「この業界には毎晩家に帰ることのできるすばらしい仕事があることに多くの女性が気づいていません。とVoie氏は言います。燃料の運搬やごみ収集車(ドライバーが直接ゴミに手を触れることはない)の運転などがこれに含まれます。

しかし、長距離トラック輸送が唯一の選択肢ではなく、「多くの女性は、毎晩家にいることができるこの業界に素晴らしい仕事があることに気付いていません」とVoie氏は言います。 これには、燃料の運搬やごみ収集車の運転が含まれます(彼女はすぐに指摘しますが、運転手は実際のゴミに触れません)。

 

トラック業界における女性の未来

伝統的に男性の役割とされてきたような場所で女性が働くようになったことを称賛する一方で、Voie氏はそれが必ずしも容易ではないことを認めています。

「多くの女性は男性が支配的な環境では自分の言いたいことが言えません。それは、男性に『何のことを言っているのかさっぱり意味がわからないよ。』と言われることを恐れているからです。そして、それは現実として起こるので、そのような批判もうまくかわせる必要があります。」Voie氏は女性たちにインポスター症候群(詐欺師症候群)と戦い、自分たちはそれぞれに相応しい場所にいるのだということを思い出すように言います。

男性と女性の求職者の間には自信に関するギャップもあります。ある調査によると、女性は自分が100%要件を満たす場合にのみ応募する傾向があるのに対し、男性は要件の60%を満たせば応募します。Voie氏は、仕事に応募するときと職場で自らの成果を上げるときの両方でしっかりと自分に自信を持つよう女性に促しています。

「女性は『私がこれをやりました!』と手を挙げて主張することがあまりありません。誰かに褒められたり、賞をもらったりしたときに、ただ『ありがとうございます。』と言う程度なのです。」

労働者不足の増大と商品に対する需要の増加により、今はトラック業界にとってとても大切な瞬間です。Voie氏とWITの努力のおかげで、トラック業界は女性ドライバー採用への大切なステップを踏み出しており、女性もそれに反応し始めています。

Voie氏は将来を楽観視しており、次のプロジェクトに興奮しています。それには、ドライバーの安全性やLGBTQコミュニティからトラックドライバーを採用する活動が含まれます。

Voie氏は言います。「これまでとても長い時間がかかってきました。でも、ついにトラック会社はこう言い始めたのです。『女性を採用する価値が理解できました。どうか私たちを手伝ってください。』」と。

 

原文はこちら:Women in Trucking: How They’re Disrupting the Industry